近年、認知機能や生活能力が衰えてしまった高齢者に対して、投薬以外のさまざまな手法を用いて高齢者の脳を活性化させる非薬物療法が注目を集めています。
非薬物療法には、書き取りや計算問題などのドリルを使った認知トレーニング、トランプや音読などを行う認知刺激療法のほか、草花や野菜を育てる園芸療法、動物と触れあうペットセラピー、香りで癒されるアロマセラピーなど多くの種類があり、専門職種が治療目的で実施することが理想的です。
しかし、デイサービスや老人ホームなど、高齢者の生活の場である介護施設において、介護職員がサポートにしながら非薬物療法を行うことでも、脳の機能やQOLを改善する大きな効果が認められることがわかってきています。
例えば、介護職員が普段のコミュニケーションの中で、高齢者に若い頃の思い出話や自慢話をしてもらうことは、非薬物療法における回想法に匹敵します。介護職員が共感を持って聞いてあげることで高齢者の脳が刺激されたり、認知機能が高まることが期待できるため、非常に有効です。
そのほかに、施設で日常的に行うレクリエーションとして、慣れ親しんだ歌謡曲や童謡を歌ったり、楽器を演奏したり、絵を描いたりすることは、非薬物療法の音楽療法や芸術療法に類似します。
このように、高齢者が楽しみながら行うことができるアクティビティを日々の生活に数多く取り入れることは、非薬物療法の観点からもとても重要です。非薬物療法を実践することで、高齢者ができるかぎり自分らしく過ごせるように支援することは、介護職員の大切な仕事の一つとなっています。